はじめに
チタン製歯根型インプラント治療が日常的に行われるまで広く臨床では浸透しましたが、それまでは、天然歯の保存は歯科治療における基本的な笹勢であり、予後が悪いことが判っていても保存に努めることしか出来ませんでした。しかし、歯周病学領域におけるインプラント、骨移植、再生療法などの治療技術の発展は目覚ましく、状況に応じては予知性が高く安定した治療結果を実現できるようになりました。
現在の歯周病治療は、従来の感染の除去という基本的なコンセプトは変わらないものの、傾向として治癒能力、免疫反応の積極的な利用、より高度な機能性、審美性を求めて治療内容や目標が変化したために、治療方法の選択肢は大幅に増加しました。このことによって、口腔内の状況に応じて歯牙を積極的に保存したり、積極的に抜歯したりすることを治療計画の中で検討されるようになってきました。また歯周病治療は歯周病の治療のみならず、並行して行われる保存・補綴・矯正・歯内療法治療に対する配慮も踏まえる必要があり、治療のステップは複雑になりました。術者には、治療方針・手段の利点、欠点を把握し、患者とともに十分に検討する必要性が求められる時代になってきております。
新しい婚療手段は単に新しい処置であるということで臨床応用が先行してしまい、治療手段としての有効性や科学的な評価を先達にされている場合があることに疑問を抱く先生方も多いと思います。私の在籍したワシントン大学歯周病科、大学院では自らが患者に施す治療の有効性、評価を客観的に評価してから初めて患者に応用する姿勢が臨床医として大切であることを学びました。また、従来から行われてきている基本的な歯周病治療の背景、コンセプト、手技を学ぶことは、最新の治療技術の有効性の客観的評価や、適切な臨床応用を行ううえでより効果的な判断を下すことが出来る指標になると考えております。
本コースでは、様々な治療方法の中から患者の条件に見合った予知性の高い現奏的なアプローチを選択するための考え方を身につけることを、大きな目標としております。
このためには特定の先生のご意見、特定な学派に傾倒することなく現代の歯周病治療の各テーマについて、可能な限り広範な文献レビューに基づき、バイアスの少ない、公平な立場より臨床に直結した内容としたいと考えております。
保存的なアプローチとしてループトレーニング、フラップ手術、歯槽骨整形の実際、分岐部病変、薬物療法、メンテナンス、再生療法に関する治療効果、予知性、適応症などの講義、実習を行う予定であります。歯周組織の審美的な治療としては軟組織を取り扱う根被覆術補、補綴治療との関連の中での硬組織を取り扱う歯冠延長術に関する治療アプローチも取り上げたいと思います。
即時埋入、即時加重などの話題の多いインプラント治療では、補綴的に配慮された埋入術式のみならず、最も大切である歯周病治療の知識と技術を踏まえたインプラント治療、とくに口腔内全体を見据えた治療方針の決定、残存歯牙の予後の診断、術前のレントゲン診査、術中の軟組織の取り扱い、付随する骨移植術に関しての講義・実習をいたします。さらに、口腔内写真撮影、レントゲン撮影の実習を通して資料の採取、ケース・プレゼンテーション、治療計画のグループディスカッションなど、他の先生との意見交換を体験していただくことも検討しております。歯周病の治療だけにとどまらない毎日の臨床の中で役立つ情報を実習・講義を通して紹介させていただきたいと考えております。
講師紹介
藤本 浩平 / Kohei Fujimoto
略歴
1994年 | 東京歯科大学卒 藤本歯科医院勤務、藤本研修会助手 |
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1998年 | ワシントン大学歯学部歯周病科大学院入学 |
2001年 | ワシントン大学歯学部歯周病科大学院卒業 Master of Science in Dentistry(M.S.D)取得 米国歯周病専門医取得 ワシントン大学歯学部歯周病科Teaching Assistant勤務 ワシントン大学歯学部最優秀臨床教授賞受賞 |
2003年 | 藤本歯科医院、歯周外科並びにインプラント外科担当 カリフォルニア歯周病学会(Califolnia Society of Periodontists)、インプラント研究部門 最優秀賞受賞 |
2005年 | アメリカ歯周病学会認定医取得 (Diplomate American Board of Periodontology) |
所属学会
- アメリカ歯周病学会(American Academy of Periodontology)
- アメリカインプラント学会(Academy of Osseointegration)
- 日本臨床歯周病学会
主な論文
- “Historogic Comparison of Osteotomes on the Bone to Inplant Interface,A Pilot Study”2001年、ワシントン大学学位論文
長期予後をふまえた治療計画とインプラント、残存歯をどう扱うか - “Concepts for Treatment Planning With Dental Implants”
ザ・クイントエッセンセス Vol24. No.1,2005
コース概要(全7回、14日間)
受講料
前納金 | 550,000円(税込) |
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講習費 | 88,000円(税込)/ 各回ごと ※全7回 ※全コース、衛生士をご同行いただけます。衛生士参加費33,000円(税込) ※再受講希望者は66,000円(税込)/各回ごと ※聴講希望者は55,000円(税込)/各回ごと |
合計費用 | 1,166,000円(税込) |
コース日程
講習日:2025年4月~2026年3月 年7回(土日)全14日間
定員:24名
※コース内容につきましては進行状況により若干の変更があり得ます。
講習日(4~3月 土日×7回 全14日間)
2025年 | |
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4月 | 12日、13日 |
6月 | 21日、22日 |
9月 | 6日、7日 |
11月 | 15日、16日 |
12月 | 13日、14日 |
2026年 | |
2月 | 7日、8日 |
3月 | 7日、8日 |
第1回 歯周疾患の基礎と診断
- 歯周疾患治療の歴史
- Evidence Based Dentistry
- 歯周組織の解剖
- 歯周病疾患の分類
- 歯周病疾患の病因
- 歯周疾患の診査・診断
- 口腔内写真撮影
実習
- 診査・治療計画作成
- 口腔内レントゲン撮影
- 口腔内写真撮影
第2回 非外科的治療
- 非外科的治療法の生物学的・科学的根拠
- 初期治療、OHI
- スケーリング・ループトレーニング
- 抗菌療法
- 消毒剤
- 咬合と歯周病
実習
- スケーリング・ループトレーニング
- シャープニング
第3回 外科的療法 1
- 外科的治療法の生物学的・科学的根拠
- 歯周外科手術の基本的原則
- 歯周外科手術の解剖
- 創傷治癒
- 歯周外科手術(硬組織)術式
実習
- 模型実習 フラップ手術
- 豚顎実習 フラップ手術
第4回 外科的療法 2
- 歯周外科手術(軟組織)術式
- 歯周形成外科
- メンテナンス
- 創傷治癒
- 口腔病理
実習
- 豚顎実習 遊離歯肉移植術・結合組織移植術
第5回 外科的療法 3
- 分岐部病変
- 再生療法
- 骨移植
- 歯周病治療と他科との関連
実習
- 分岐部病変
- 再生療法
- 骨移植
第6回 インプラント
- オッセオ・インテグレーションの生物学的・科学的根拠
- インプラント治療における診査、診断、治療計画
- インプラント治療における外科治療
- メンテナンス
実習
- ステント製作
- インプラント埋入術
第7回 総合治療/実習
実習
- ケースプレゼンテーション
- サイナスリフト 直接法の実習/間接法の実習